「? あの人って?」
「……ごめんなさい。今日、《白》の駐車場で、仲好さそうに……はなし、てた……」
そこでまた嗚咽に紛れて声が消えてしまった。こわい。答えを、知るのが。でも……黙ったままにも、出来ない……。
流夜くんからは、不思議そうな声で返事があった。
「……誰だ? そんな奴いないけど……」
「い、いたでしょ。すっごく綺麗で可愛い女の子!」
「いや、そんな奴本当に俺の周りには咲桜ぐらいしかいないんだけど……」
「は、はぐらかさないで。絆さんだって可愛いじゃん」
「あいつをそう見ろって大分無理な話なんだが……ちょっと待て? 《白》にいたのは……バカか?」
「……は?」
な、なんだって?
「斎月(いつき)と書いてバカと読むバカなら、一人いる」
「………」
流夜くんは真剣だ。
涙、止まった。
流夜くんの口から出た名前。……なんか色々ツッコミどころあるけど――流夜くんの声は真剣だ。
「斎月のこと、見かけたのか?」
流夜くんにとっては想定外の人物だったようで、言葉がはっきりしない。ひとしきり、うーんと唸っている。
それでも……あの人は、たまたま逢った人、とかではないんだ。
「あいつのことは何て説明すりゃいいかな……言って置くけど、元彼女とかそういった関係では一切ないから。あいつには決まった男がずっと昔からいるから」
今言えるのはこれだけだと言うように、流夜くんは言った。でも、それだけでは納得出来なかった。
――真剣な顔の流夜くん。親し気に出された手。そんな人が、どんな関係だって言うの。
……でも、そろそろ肯かないと流夜くんを困らせる。恋愛関係とは関係ないと、断言してくれたのに。