苦し紛れな俺だ。口は渇いてそんなことしか言えない。
しかもその一言で、空気がぴんと張りつめてしまったような気さえした。
俺がこくりと唾を呑み込んだ直後、神宮先生から鋭い反応があった。
「あ?」
………―――――。
見透かすどころか、射抜き殺すような瞳。
俺……もしかしてかなりヤバい人に、共犯者持ちかけちゃった……?
「現状、俺がそちらの秘密握ってんだ。下手な真似するな」
……口調までがらりと変わった。神宮先生って、こんなだったんだ……。
「……下手な真似じゃない」
「………」
神宮先生は、品定めるみたいに見てくる。
「咲桜は、教生の頃から知ってる生徒だ。もし神宮先生が咲桜に悪影響を与えるようなら、俺は咲桜の味方になる。そういう意味だ。……来桃とのこと、まさかばれているとは思わなかったから、似た者同士協力できれば、と思って話したんだけど……なんなんだあんた。少なくとも教師やってる人間じゃないよ」
「だろうな、教師ももうすぐ辞めるし。俺は、咲桜の父親の知り合いだっていう、それだけだ」
「――――」
咲桜の父親……華取在義氏? って確か―――
「え、警察官、なのか? 神宮先生……」
まさか潜入捜査官、とか? しかし神宮先生は首を横に振った。
「警官ではない。それ以上は推察無用。知れば多賀来桃まで巻き込むことになるぞ。戻れる位置にいることを勧める。それから――ここまでばれたらな、先生とか言わなくていいですよ」