「なにを?」
「………結婚しろって」
「言ったら肯いてくれるか?」
「………」
「絆が請けてくれそうなときにちゃんと言うから」
「そう言ってあんた、十五回失敗してんのよ?」
「十五回、絆が請けてくれない状況を知った、とも言う」
「そうへらへらしてるからよ。自業自得」
「そ? じゃあこれは本気で聴いてもらえる?」
「は―――?」
「 。 」
「―――――」
「これは生涯で絆しか知らない言葉だから。ありきたりでごめんなー。引き出しの少ない男で……絆?」
絆は、真っ赤になった顔を背けることも出来ないくらい沸騰している。そんな顔が珍しくて、じーっと眺めていた。
「絆? 熱ある?」
「ま、まさかっ。それに、そんなこと言ったって、神宮や春芽に何かあったら降渡、そっち行っちゃうんでしょ」
「……は?」
なんでここでりゅうとふゆ?
「だって、あのときそうだったじゃない。降渡、何も問題ないくせにわざと問題児になって留年して、わたしが先に卒業しちゃって。降渡に今まであったこととか知ってるから、降渡が神宮たちを大事にするのはわかってるから泣き言は言わないわよ。それでも―――」
「絆」
震える絆の手を握った。
「もしかして、ずっと怒ってたのか? 留年したこと……」
ギッと睨み上げられた。
「あ、当たり前でしょう⁉ わたしなんかより幼馴染が大事なんでしょ⁉ そんな奴と結婚して、もし子供になにかあったときに神宮たち優先なんかされたら――
「ごめん。高校んときのことは謝るしか出来ないけど、ごめん」
「あ、謝るくらいなら最初っから――」
「うん。最初っから、絆を一番にするべきだった。ごめん」