夏休みも流夜くんは学校での仕事があるそうだ。

――けど、遙音先輩から聞いた話だけど、基本性能が群を抜いている流夜くんは、さほど時間をかけずに学校ですべき仕事は終わってしまうらしい。

そういうときは本校舎の教師室を抜け、旧校舎で私事の方を片付けるという。

藤城の夏休みは、基本的に土日以外総て補講がある。

午前で終わるものがほとんどだけど、一応進学校なので、はっちゃける余裕は生徒にはあまりなかった。

『流夜くん』と知り合いになってから、私は少しずつ勉強に時間を割くようになっていた。

それまでも笑満に勉強を見てもらうことはあったけど、流夜くんがよく『調べなさい』って言うから、調べていたら自然とそれが勉強の時間になっていた。

……流夜くん、策士か。

笑満の指導を受けてケーキ作り挑戦中の私は、流夜くんの誕生日の一週間前になって、やっと要領が摑めた。

料理そのものには慣れているから、一度程度がわかればそのあとは失敗しなかった。

やはり慣れ。そして慣れるまでの努力なのだろうか。ずっと付き合ってくれた笑満と龍生さんに感謝するしかない。

夜、夕飯の支度や明日ののお弁当の準備も終わって一息ついたとき、スマホが着信を告げた。流夜くんだった。

「は、はい!」

『咲桜、今いいか?』

「うん、大丈夫。流夜くんお仕事は?」

『終わった。これから吹雪のとこだ。もらった弁当、美味かった』

「よかった。忙しいときは言ってね? わざわざうちに来てもらうのは大変だから。私のお弁当作るのは日常だから気にしないで」

このところ、私事の方が忙しいらしい。

学校から吹雪さんのところへ直で行くこともあるそうだから、学校に行った隙に夕ご飯用のお弁当を渡してきた。

『ありがとう。咲桜にちょっと訊きたいんだけど、今月の終わり――三十一日って、何か用事入ってるか?』

「えっ?」

ドキッとした。それはもう気合い入れてケーキ作ってる日だ。

「えと……補講終わってから、少しうちでやることはあるんだ。それが終わったらその――」

流夜くんの誕生日をお祝いしたい。そう言いたいけど、何も言わないで驚かせたい気持ちもある。

「えと――」

『都合悪くなければ、時間空いたらこっち来てもらえないか?』