「流夜だったら適度な甘さ、より少し抑えた方がいいだろう」

「だったらグラニュー糖の代わりに―――」

職員会議のため授業が半日で終わった月曜日、笑満とまた《白》を訪れていた。

流夜くんに作るケーキを決めるため、幼い頃から知り、自身の実家に流夜くんを引き取った経緯のある龍生さんの細かい助言を得るためだ。

『流夜くんなら咲桜が作ったものなら文句はつけないよ』と笑満が言っていたけど、何分私はお菓子スキルゼロなので、細部まで決めてから作りたかった。料理のように目分量をしては味が崩れることもあるらしいから。

「あれ、いー匂い。何作ってるの?」

「吹雪さん」

今日は昏めの色合いのスーツの吹雪さんがやってきた。どんな色を来ても似合うな、この人は。

龍生さんに、「遅めの昼休憩ですよ。サボってません」と言い訳していた。

「流夜くんの誕生日に、ケーキ作ろうと思いまして」

カウンターの中にいた私と笑満に向かい合うように、吹雪さんが椅子に腰かけた。

「あ、そっか。そろそろ誕生日だね」

「吹雪さんたちは何するんですか?」

「んー、僕らは、って言うか、流夜と降渡って自分の命に否定的だからねー。なかなか踏み出しにくい話だね」

「え……で、ではこれっていらんお節介、だったりします……?」

吹雪さんの一言で、不安が頭をもたげてきた。吹雪さんは誰より旧い流夜くんの友人なのだから、私の考え及ばないことも知っているはずだ。

「そんなことはないんじゃない? 僕らと咲桜ちゃんって立ち位置全然違うし。今は流夜、いい感じに命に肯定的だしね。咲桜ちゃんのおかげじゃない?」

「……そう、ですか?」

「たぶん、だけどね」

美麗な容姿に薄ら微笑を浮かべる。マナさんによく似た笑い方。けれど、在義父さんの元相棒たるマナさんが太陽みたいな人なのとは違って、吹雪さんは名前通り淡雪みたいな人だ。

「龍さん何でも出来るよね。料理にお菓子にお茶に」

「まあ、一通りはひかるに教えられたからな」