神宮流夜と神林蒼。

一つ違いの二人。

それぞれのグループの中心核。

率いるタイプ。

ゼンの分のコーヒーを落としながら言う。

「けど流夜の場合――もし恋人と将来を望むなら、決定的に変わらないといけないよねー」

「変わる?」

オウム返しのレンに、「うん」と答えた。

「ゼンがレンと結婚するために、色々と天科の内部(なか)をとっ散らかしたみたいに、何かをね、変えて壊さないといけない。それが出来ないと、他人がキライなままで恋人と添い遂げるのは難しいと思うよ。特に流夜だし」

俺の言い方に、ゼンは渋面になった。

「変な評価をするな。そんなもん、なるようにしかならんだろう。お前がまだヤンキーひきずったままでいるみたいに。決定的に変わっていないのはお前だって一緒だ」

「俺はいいんだよー。今の自分がすきだからさー。変わる必要ナシだよ」

「堂々と言うな」

「いいのいいのー。それに俺は、雅(みやび)も、ゼンもレンがいるから老後の心配もないし」

何故いきなり老後……と呟いて、ゼンは片手で頭を押さえた。

「話が飛び過ぎだ、ケン。……雅が苦労ばかりするわけだ」

「俺に惚れられたのが運のつきだねー」

コーヒーを見ながら、磨いてあったカップを棚に仕舞う。

「ねえゼン。私に惚れてくれてんの?」

「………は?」

いきなりの妻(笑)からの問いかけに、ゼンは面喰った。

そんなことを訊く理由を知る俺は、二人に背を向けて軽く吹いた。

「流夜がさ、仏頂面の超不機嫌な顔しか見たことなかったんだけど、彼女と一緒だと常に楽しそうなんだよね。笑うし。ケンがそれを、べた惚れゆえって言うから……ゼンはどうなの?」

興味津々で訊かれて、ゼンは俺を睨みつけてきた。あはは、俺が原因だってばれてる。

「お前はな――」

ぶに。

「いつになったら俺の嫁だっつー自覚出来んだアホ」