玄関先で蒼さんを振り返る。
「ごちそうさまでした」
「またゆっくり来いよ。それから流夜。うちはいつでも歓迎するからな?」
「あ、……転任の件ですか?」
流夜くんは否定していたけど、蒼さんは本当に来てほしいんだな。
「初任から桜学(うち)に来いつってんだけどな」
「絶対行かねえ。俺は天科サンにも十三にもつかない。お前らの喧嘩には巻き込まれたくない」
流夜くん、この話になると途端に子供っぽい喋り方になるのが面白い。
「華取さんについている、お前がいてくれるとバランサーになってくれそうでちょうどいいんだけどな」
「ヒトをなんだと思ってんだ」
流夜くんの言葉に、蒼さんがくすくす笑う。
……十三桜のお話を聞くとき、流夜くんたちのお話も聞けるかな。
私が準備するのを待って、流夜くんは蒼さんに「また」とだけ告げて先を歩く。
私が「お邪魔しました」と頭を下げると「気をつけてな」と返事があった。
「――流夜。うまくやれよ?」
「………」
流夜くんは少しだけ蒼さんを顧みた。
「当然」
流夜くんが私の手を握って、神林のお家を辞した。
最後の蒼さんの言葉の意味がわからなくて、流夜くんを見上げる。
「どうした?」
「さっきの――蒼さんが言ってたの、どういうこと?」
「ばれないように上手くやれ、じゃないか?」
「何を?」
「……あいつも俺の同業者だから」
「―――あ」
そういうことか。
「……すみません……」