「双児の年子もすごいと思います。まだ小さいんですか?」
「二番目は去年生まれたばかりでな。流夜、白に興味持つなよ」
「俺は持たないけど咲桜は持つだろうなーと」
「……どういう意味だ?」
「言葉通り。咲桜、ちなみにこいつが、桜学Pクラスの初代の一人」
「………えぇえ⁉ って……あの、ですか⁉」
「どのだか知らんが、まあ高等部ではPクラスだった」
「んで、初代Pクラス統括」
「んなもん請けてねえよ」
蒼さんは流夜くんに軽く拳骨をくれてから、どうぞ、とソファを勧めてくれた。
自分はそのままキッチンへ向かう。私が手伝いに行くべきか座れないでいると、蒼さんから声がかかった。
「店持ってる奴の淹れ方だから、少しは期待してくれ」
暗に気にするなと言われたみたいだ。「ありがとうございます」と座りなおした。
すぐに蒼さんがお盆にお茶器を載せて来た。
「また天科サンと喧嘩したのか?」
蒼さんが丁寧にコーヒーを淹れるのを眺める。流夜くんはそれには興味なさそうに蒼さんに問う。
「喧嘩じゃねえよ。閃(せん)のこととか、色々。一番は恋が未だに剣さんとこ行くのに無断で邸(いえ)抜けるからどうにかしろって文句言われた。痴話喧嘩まで面倒見切れねえよ」
「違いない」
流夜くんは楽しそうに肩を揺する。
あましなさん、ってたぶん、天科グループの人だよね? そもそも、流夜くんと蒼さんってどういう知り合いなんだろう……。
「あの……蒼さん、最初から私のこと知ってたみたいですけど、もしかして父さんもお知り合いですか……?」
私を流夜くんの生徒だと言った。だとしたら、在義父さん経由のセンもある。
「父さん? いや、流夜が赴任した学校だから、ちょっと生徒を調べさせてもらっただけだ。遙音もいたしな。華取さんのお父さんは、たぶん知らないと思うけど……」
「在義さんだよ」
流夜くんに言われて、蒼さんは何かを思い出すように中空を見つめた。五秒ほど。
「……ああ、県警の?」