「―――⁉」
え⁉ なんでいきなり生徒だとばれてる⁉ 今日制服じゃないのに!
「どこでわかった?」
流夜くんは別段焦った様子もなく訊ねる。いやその反応もおかしいよ!
「華取咲桜、だろ? 藤城の」
「やっぱこっちの生徒も網羅してるか。お前に隠す意味ないと思ったから真正面から連れて来たんだよ」
流夜くんが私の方を向いて、軽く頭を撫でた。
「神林蒼(かんばやし あおい)。俺の一個上の桜学の教師。Pクラスに入れる人材発掘が主な仕事だから、咲桜のことも知ってると思って隠さなかっただけだ。告げ口趣味じゃないから心配ない」
「神林、先生? ですか?」
「あー、流夜の教師の方の同業者――だ。よろしく」
蒼さんは、少し困ったような微笑みを見せて挨拶してきた。
気が立っていたのは先ほどだけで、私や流夜くんに怒っているわけではないようだ。蒼さんが流夜くんに目をやる。
「恋のとこ行くつってもまだ開店前だろ。あがってくか?」
「白(ましろ)は?」
「紫(ゆかり)と翠(みどり)と出かけてる」
「四つ子も?」
「四つ子⁉」
私が素っ頓狂な声をあげると、蒼さんは平坦な瞳をした。
「四つ子じゃねえよ。華取、どうぞ入ってくれ」
私が玄関先で止まったので、蒼さんが中に招いてくれた。
「正確には双児の年子。流夜たちが面白がってそう言ってるだけだから」
蒼さんが呆れたように言うと、流夜くんはくすくす笑っている。
そして続けて説明した。
「白が蒼の嫁さんで、紫と翠は蒼の妹なんだ」