『龍生は味覚いいからね。調味料の割合とかまでわかっちゃうんだ。咲桜の絶対音感の味覚バージョンみたいなものかなあ』

ということだ。最終的には流夜くんにあげるのが目的なので、流夜くんに味見役をしてもらうのは難だ。

それが。

はちがつ ついたち。『ほづみ』さんという苗字もある日付だ。ちなみに四月一日で、『わたぬき』さんもいるそうだ。

いや、そういうことではない。

知らなかったことが問題だ。

なんで……そんな大事な日を……訊いておかなかったの……。

カウンターに手をついて項垂れた。

―――のも、三秒ほど。

「笑満! 誕生日といえば何⁉」

「丸投げかよー」

勢いよく振り返ると、頼が机にだれていた。

「んー、咲桜のレベルだったら、まずはケーキ作ってみる?」

「出来るの⁉ 噴火しない⁉」

「まず爆発させないから。あたしがいたら」

たしなめられた。

「ちゃんと手順と順番間違えなければそんなことはおこんないの。桃子ママが不器用だったってだけでしょ」

「桃子母さんは世間知らずだったんだよ」

「……桃子さんディスるのやめてあげて」

頼にたしなめられた。

「流夜くん。甘いのダメとかないんでしょ?」

「うん」

「じゃあバースデーケーキは作っていいよね。咲桜、これからうち来れる? 練習再開! 時間ないから強化するよー」

「う……がんばります」

「うん。龍生さん、今日はありがとうございました。また味見してもらってもいいですか?」

笑満が言うと、龍生さんは軽く肯いた。

「ああ。構わねえよ。……なあ、松生の娘ちゃん」