両手を握り合わせながら、その瞬間を待っていた。
目の前にはカウンターの奥の龍生さん。私の隣には笑満。笑満も真剣な顔で龍生さんの手元を見ている。
龍生さんは、お皿の上からスプーンを口元に運ぶ。
「――――」
私の緊張はピークだ。
「お、うめえじゃねえか」
「「ほんとですか⁉」」
私も笑満も身を乗り出していた。後ろのデスク席にいる頼からパシャリと音がした。
「笑満くらいは美味いって信じてやれよー」
ぼやいた頼に、笑満はキッと振り返る。
「あんた咲桜のお菓子スキルのなさをなめないでよ!」
「笑満、非道いよー」
「いや、真実だよ」
認めたのは私だった。
「娘ちゃんが菓子作りねえ。流夜の誕生日対策か?」
「え?」
「あれ、知らねえか? 流夜の誕生日。八月一日」
「そうなんですか? 誕生日って言ったら、咲桜―――」
「笑満―、待ってやってー。咲桜フリーズ中―」
私、龍生さんを見た格好のまま固まっていた。笑満はそろりと離れて、頼の反対側に座る。
「知らなかったみたいだね」
「だな。笑満は、オトの方は知ってんの?」
「もちろん。十一月。久しぶりにお祝い出来るなぁ」
ほこほこする笑満とは反対に、私は冷風に吹かれていた。
まさか……誰に訊くこともしていなかった……。
今は七月半ば。
テストは無事――若干私は憂いな思いをしたけど――終わって、私は苦手克服のためのお菓子作りをと、始めたばかりだった。
在義父さんに味見をしてもらって、そのとき龍生さんにも審判してもらうのを提案された。