「うん?」

「その……私が流夜くんを嫌いになるとか、それだけは絶対あり得ないので」

「……俺、なんかしたか?」

「私の宣言みたいなもんです。なんか――急に、言って置くべき気がして」

「……ありがとな。でも宣誓のが嬉しいかな?」

「宣誓? って、大会の開会式でやるあれ?」

それは選手宣誓だな。

「まあ、誓いの方が、ってことかな」

「………」

すっと咲桜は片膝を折った。

「今度はなんだ?」

「お手を。今から誓い申し上げます」

「……咲桜」

呆れた声しか出ない。それはまるで騎士の誓いじゃないか。なんで男相手に片膝をつく。俺も床に片膝をつけた。そして言い渡す。

「お前しばらく男らしい言動禁止」

「え⁉ なんで⁉」

「なんでも。そんで男らしい認識あったのか」

「男らしいというか、私の言動の基礎って在義父さんだから」

「………」

心の中でため息をついた。在義さんの影響大きいな。ファザコンとマザコンの混合技、めんどくせえ。しかしそれなら在義さんは桃子さんに跪いたことがあるのか? やりそうだ、あの人なら。そしたら俺って今桃子さんの位置なのか? ……やめてくれ。

「咲桜は少し落ち着きなさい」

「……はい」

咲桜は悄然(しょうぜん)と肯いた。

「やっぱり嫁は慎ましい方がいいよね……」

そういう解釈になんのかよ。咲桜は真っ直ぐ過ぎて色んなとこにぶつかる。

「………」

そして、ぴん、と咲桜の額を弾いた。

「痛っ⁉ こ、今度は何?」

「嫁さんは、咲桜だからいいんだよ」

俺がさらっと言うと、咲桜は額を押さえて真赤になった。