傍から見てりゃすぐにわかる。

咲桜自身の自覚はないが、マザコンが悪化してそうなったのだろうと俺は思っている。

母との永の別れがあまりただ事ではないから。

俺はまだそこへ踏み込んでこめはしないけど。

「でも、頼と友達をやめる気もありません」

「………」

「頼の近くにいれば、他の子が私たちに近寄りがたいことはわかってました。大前提、頼に対して恋愛感情とかそういうのはありません。友感情だけです。でも――頼が周囲に距離を置かれる原因を作った罪悪感とか、そういうのを抜きにしても、もしも出来ていた女の子の友達の何人よりも、私は頼の友達でいることを選びました。どんな経緯があっても、私はそれを選んでいた。そう思います。異性認識はありません。でも、縁を切ることも……出来そうにありません。ごめんなさい」

土下座した。ソファの上で。

………うーん。

「……どうして、急にそんなことを?」
 
咲桜は頭を下げたまま答えた。

「何と言うか……笑満の隣に遙音先輩がいるのは悔しかったんだけど、頼の隣に女の子がいたら、ああよかったなあ、ということを思うなーと思いました」

おばあちゃんか。

こっそり思った。

「その延長線? かな。頼は友達だけど一応男子で、私はよくつるんでて、でも流夜くんの傍にそんな仲のいい女の子がいたら……例えば絆さんとかに、私は妬いてしまうな、と思いました。絶対」

「絆は俺のこと敵視しかしてないぞ? それに――」

くい、と顎に指をかけて上向かせた。

「俺みたいな変なのと仲いい女なんて、咲桜ぐらいのもんだ。安心しろ」

「……安心します」

「うん」

絆とは仲がいいわけではないし、ほかに近しい女性もいない。

俺に一番近い『女性』自体が、咲桜だ。

「日義のことも気にするな。一応、自信はあるし」