ひとしきり泣くと、咲桜ははっと顔をあげた。

「わー! ごめんなさいー!」

「ん。落ち着いたか?」

「すみませんー! なんか私とっちらかったことばっかやって言って!」

「気にするな。抱え込まれるよりはいい」

「……あ、ありがとうごいざいます……?」

「うん」

「てわー! ごめんなさい! 服! 肩! 洗濯してきます!」

「え? ああ」

咲桜が泣きついていたため、肩口が湿っている具合を越して濡れていた。

「別にいいって。着替えればいいだけだし」

「ダメです! 風邪ひきます!」

「だから大丈夫だって。――それより咲桜?」

「う……はい」

咲桜はしゅんと小さくなった。……反省しまくりのようだな。

「ごめんなさい、でした……。笑満が……とか……」

「いや、正直そういう感覚はよくわからないから俺から言えたことなんてないんだけど」

「………」

「でもわかるのは、松生だってとられてんだぞ、てことか」

「……え?」

「咲桜を、俺に」

「………」

咲桜は首を傾げた。どういう意味かわかっていない顔だ。

「松生だって、王子様って言うくらいすきな咲桜が、俺のになっちまってんだから」

「え……。――――」

かああっと咲桜が頬を染めた。理解したか?

「おあいこだから、納得しろ、と……?」

「そんなこと言わない。ただ、現実はそれだけだってこと。松生がとられた、なんて事実はないってこと」