「……そういうときはね?」

遙音くんの肩に手をかけて、頬に唇を寄せた。軽く音が鳴る。

「それでも傍にいて、て言えばいいよ。あたしは遙音くんがゆるしてくれる限り、傍にいたいって思ってるから」

すぐ離れると、遙音くんは口を真一文字に結んで呆気にとられたような顔をしていた。

こういうことだって、度胸があってお姉さん系美人の咲桜がやればカッコもつくのだろうけど……自分では、こうやって背伸びをしないと遙音くんには届かない。

声を大きく叫ぶより、囁ける近さにいたい。

「――笑満ちゃん」

「は、はい」

「笑満ちゃんを護る場所を、ずっと俺にください」

「―――え……?」

遙音くんは更に左手を重ねた。

「危険過ぎることに向かっていくのはわかってる。でも、笑満ちゃんは、俺が護るから。だから、傍にいてほしい」

そば、に……?

「……どのくらい? いて、いいの?」

「ずっと」

「ずっと……?」

「うん。ずーっと」

永い時間を。

「………はい」

押し出たあたしの声は小さかった。

不安定な爪先立ちで背伸びをしないと、あなたには届かない。

それでも足はゆらつくから、……その肩に手を置かせて?

「……ずっと、ね?」

「うん」

親友と道が分かれたって、あなたと生きたいから。