「もうなんでもどうぞ。あんな恥ずかしい思いさせられて羞恥心とか今ぶっ飛んでるから」

ごめんね、と答えて、笑満ちゃんの手を握りなおした。

「もし、俺と咲桜が別の道に進むってなって、笑満ちゃんはどちらかとしか一緒にいけないってなったら、どうする?」

「遙音くんと一緒に行って咲桜とは電話する」

「………」

現代的な答えだった。電話……。

……笑満ちゃんから咲桜が切り離せないのは、ようくわかった。それでも、

「俺と一緒に来てくれるんだ?」

「言ったでしょ? あたしは遙音くんと一緒にいたいんだって。そこんとこわかってください」

笑満ちゃんに軽く睨まれた。

「ありがと」

笑満ちゃんの頬に手を触れさせると、口を真一文字に結んで耳まで紅くなった。

「女の子にされっぱなし、はちょっと悔しいかなー」

「な、なにが?」

「なんだろね? でも、言ったろ? 笑満ちゃんもらうって」

「もら……どこでそんな言葉覚えたの!」

「雲居とか神宮あたりかなー」

「変なこと吹き込まれちゃダメでしょ!」

「変なことかな? 俺が何したいか、わかってるよね?」

「う……」

「笑満ちゃんがやだったらまだしないけど、俺はもうほしい」

「~~~」

「いやだったら逃げて」

「……………逃げられるわけ、ないよ……」

小さな答えを聞いて、嬉しさを隠せず微笑んだ。

俺の楽しそうな視線と、笑満ちゃんの恥ずかしそうな視線が絡み合う。

「――ずっと好きだった。笑満ちゃんのこと。だからこれからも、好きでいさせて」

「………あたしも、遙音くんだけが大すきです……」

重なった唇のあたたかさ。

繋いだ手は、もう解かれない。