「……笑満ちゃんの、咲桜への王子様扱いがすげえやだ」
「ああ……。咲桜を男扱いするな、だな」
「お前はそうだろうけど。俺の文句はこの前言ったとーり。お前が咲桜の男なんだから責任取れ」
「……どんな責任転嫁だ。松生への接し方なんて、俺は知らんでいいだろ」
「知らすわけあるか!」
「じゃあ訊くなよ」
「………」
そう返すと、歯噛みしている。……松生となんかあったのか。
「お前らの場合、離れてた時間が長いんだから、言いたいことあったらはっきり言わねえと、察してください、は無理なんじゃないか?」
松生の、咲桜ベタ惚れも重度のようだし。
「………」
「話したい、つって聞いてくれない相手なのか?」
「……それはないと思う」
「んじゃ攫ってでも話しゃいいじゃねえか。お前は学内でも堂々と出来んだろ」
「……なんでお前はそう短絡なんだ……」
出来るけど、と遙音は小さく言った。
「俺と話してるとバカらしくなるって言ったのはお前だ」
「………だったな」
俺に倫理観とか求めてもほとんど意味がないことは承知しているはず。
「………」
それきり遙音は黙って、そのまま旧館を出て行った。……何があったんだか。