そういえば流夜くんってお仕事の話、しないよね。

登校中にそんなことを考えた。

それに昨日の流夜くんの――嘘、と感じたもの――言葉が、どうして本当じゃないと感じたのだろう。

……もともと大っぴらに言っていいものとは思ってないけど……。……在義父さんの仕事だって、言わないように育てられたし……。

それに類していて、流夜くんは警察の人間ではない。一般人という括りだ。私には喋れないことも多いだろう。

それを無理に教えて、は、なんかやだなー。

それでも気になってしまう、流夜くんの『相棒』。

遙音先輩に訊けば教えてくれる? それはそれで申し訳ないというか……。

それこそ、降渡や吹雪から話してもらえるように――と言われたばかりだ。

なら降渡さんに訊く? ……向こうから話してくれるならまだしも……。

頭の中で堂々巡りをしている。

「あ」

ひとつ、思いついてしまった。

捕まったハッカーの中でも高レベルな者は、出所の際迎えに来る者があると聞いたことがある。その技術をほしがるものたちだ。

「………」

流夜くんの相棒も、もしかしてその類(たぐい)? まさか、元犯罪者となればその存在は隠さずにはいられないだろう――。私を警察側の世界に巻き込むことを流夜くんは嫌がっているように感じるから、更に教えてくれない理由の納得になる。そういう可能性もなきにしは、かな……。

教えてくれない存在、ではなく、言えない存在、なのかもしれない。

「………うん」

そう思って納得しておこう。

流夜くんの相棒さん、勝手にそんな扱いしてごめんなさい。

心の中で謝っておいた。

今は自分の中でそう、カタをつけておいて、流夜くんや降渡さんから、話してもらえる自分になろう。

どんな人でも、流夜くんにとっては大事な存在なのだろうから。