「いいの? 忙しくない?」

「通常通りだ。咲桜が都合悪くなければ」

「行く! たい!」

「いくたい?」

「行きたいが混ざりました!」

「元気だな」

「急に元気なった! ありがとうございます!」

「……やっぱ体育会系なんだな」

流夜くんが軽く笑った。

二人での食事のときも、向かいには座らない。隣か、角を挟んで座る。流夜くんのところで習慣になっているのだろうか。

笑満に言ったら不思議そうな顔をされた。「正面から見たくないの?」と。勿論真正面から見ていたい。こんなカッコいい人、絶対いないし。でも、なんとなく――隣がよかった。

今日も角を挟んでの、食事。

「どこ行くとか、訊いてもいい?」

「ん。そんな遠くじゃない。けど歩ける距離ではないな。……別に変装とかしなくていいからな? ちょっと特殊な場所だから」

「特殊?」

な場所ってどんなだ?

「そう。あとは当日の楽しみにしておけ。――話変わるけど、咲桜は天龍に行きたいとか、思うか?」

ドキッと、心臓が跳ねた。

「えー、と……」

カタン、と箸と茶碗を置く。なんだか居住まいを正して話すべきことの気がして。

「流夜くんが育ったところ、は見てみたい。んだけど、……在義父さんを、その……追い出したところ? って言うのは、なんかあんまりやだ」

そこまで言ってはっと手を振った。

「あ、やだって言っても絶対行きたくないってわけではなく! なんかこう、心の準備が必要っていう感じで! 私その辺りまだまだで――」

「わかった。じゃ、結婚したら行くのはどうだ?」