さっぱり事態が呑み込めなくて、恐る恐る訊いた。
流夜くんと吹雪さんはどこ吹く風で、のんびりしている。
「降渡は結構前から絆に結婚しようって言ってんだけど、絆が一向に肯かないんだ」
「まああの二人、正式に付き合ってるかって言ったら、それもびみょーなとこだしね」
「降渡はそのテンションなんだけど、絆がな」
……降渡さんがプロポーズしてるのに、絆さんが受けないってことだよね?
「……降渡さんの片想い?」
「いや、絆が好きなのも降渡。だからさっさと結婚すりゃいいのに」
……ややこしい。
「あの、止めなくていいの?」
「それが止まらないんだよねえ。僕らが下手に手ぇ出しても、火に油」
「降渡が折れるまで終わらないから、待ってたら結構経ったな。……ごめんな、すぐに知らせないで」
「ううん――私は大丈夫だけど――」
ざっと見回すと、龍生さんの姿もない。
「龍生さんは?」
流夜くんがお店の奥を指さした。
「喧嘩終わるまで臨時休店つって引っ込んだ。営業妨害とかいう概念がないのか、あいつらは」
「――聞こえてるわよ春芽神宮!」
途端、流夜くんと吹雪さんが「やべ」という顔をした。
割かし隠すでもない音量で話していたら絆さんに気づかれたみたいだ。
「絆、いい加減返事くれって」
「あんたの不埒が治ったらね! 春芽神宮、何面白がってんのよ!」
厳しい声だった。降渡さんに一喝で返し、今度は腕を組んで背の高い二人を見上げる。
か、カッコいい……! 何故か私は感動していた。
「絆ちゃん、いい加減結婚したら? 僕もさすがに降渡が可哀想になってきたよ」
「可哀想ならあんたが結婚してやればいいじゃない」
「んー、それは嫌だなあ」
「あたしもそうよ」
「でも絆ちゃん、降渡のこと好きでしょ?」
「そ……れは……」
もごもごもご。絆さんは少しだけ頬を赤らめて口を濁した。
「……ん? その子は?」