「宮司くん――すまなかったね、急な依頼をして」
「いえ、こちらこそ夜中にお呼び立てしてすみません。……お娘さんは、大丈夫ですか?」
「……流夜くんのところだ」
華取さんは瞼を伏せる。少し驚いた。あの華取在義が?
「……結構寛容なんですね。娘の夜歩きを認めるなんて」
「咲桜の決断を邪魔しない信条を持っているからね」
華取さんは自嘲気味に笑った。……娘の、決断。その言葉を心の中で繰り返した。
「――では、これを」
封筒を差し出す。華取さんは机に乗ったそれにすぐには手を出さず、また一度、瞼を下ろした。
「……しかし君がよく流夜くんの検体を持っていたね。衝突しているところしか知らなかったから驚いたよ」
「あー、はい。もらったのは高校の頃です。ちょっと大変でしたけど……」
俺が藤城生で、三人が桜庭生だった頃のことだ。こんなことがあった。
「雲居―、春芽―。ちょっと頼みがあるんだけど」
休日の桜庭の寮に訪ねて来た俺に、内容を聞いた二人は快く応じたのだった。面白そうだからいいよー、と。
「あともう一つお願いしたいんだけど……」
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「ここ? 入っていいのか?」
「今ならいるからね。もう少ししたら一緒に寮を抜ける時間だけど」
「あいつはストレートに話した方が早いからな」
春芽と雲居に言われて、肯いた。ノックすると「はい」と応答があった。
「神宮。休日にすまない。宮寺だ」
「あ?」