そう言えば旭葵にバレたこと、まだ咲桜には言っていなかった。……そうだなあ。

一計、案じるか。けど、

「いつでもどーぞ?」

それよりも今は可愛い咲桜をからか――愛でることが優先だ。

自分から仕掛けておいて真赤になってわたわたしている。本当に、咲桜といると楽しくて仕方ない。

一方咲桜は、自分からけしかけておいていつもと反応が違う俺に泡喰って混乱していた。こちらは余裕綽々だと色々大変なようだ。

咲桜は震える手つきで口まで運んでくれた。

「よく出来ました」と頭撫でると、くすぐったそうな顔をした。それからふと視線を落として、何か考えるような間があってから勢いよく振り仰いだ。

「流夜くん! 何かほしいものってない?」

「ん? 今度はどうした?」

咲桜の突然言動に対しての応策が「今度はどうした」になってきた。

「だって、私こんな素敵なものもらっちゃって……中途半端な完成度のケーキしか作ってなくて……プレゼント。何かほしいもの、ある?」

真っ直ぐに見てくるから、言葉に詰まった。

それから、そうだなあ、とわざとらしげに口元に手を当てている。

咲桜はドキドキしているような、期待しているような、そしてどこかおっかなびっくりな眼差しだ。

「キス。咲桜からほしいな」

「……………え?」

咲桜は欠片も考えていなかったのか、ぽけっとした。

「咲桜からキスもらえたらそれ以上はないな」

紳士然と咲桜の手を絡め取って指先に唇を落とした。

途端、爆発したかと思うくらいに咲桜の顔が真っ赤になった。

えーと、えーと……と、咲桜は唸り出す。それを楽しい気持ちで見る。

――どこまでが今の咲桜の許容限界なのか、測ってみるのもいいかもしれない。

「――わかりました」