「むしろ俺の方が知りたいくらいだけどね」

宮寺先生が苦笑気味に言うと、頼は値踏みするように見返す。ふと、先輩が訊いた。

「宮寺、どうやってここ来た?」

「え?」

「神宮が尾行許すとか思えねーんだけど。お前が尾行の腕あがったとも思えないし」

「厳しいなー、夏島は」

まあ、別に。と続ける。

「この前な、華取さんとここ、見えるとこで話したろ? そんでなんでわざわざ離れたとこで? と思ってね」

「………」

私からばれていた。くそう。

私が押し黙ると、流夜くんが「違う」と手を振った。

「俺がそこにしろつっといただけだ。勝手な推察でボケたこと抜かしてんな」

流夜くんの辛辣な言葉に反応したのは、何故か笑満だった。

腕を伸ばして、私の耳をふさいだ。「笑満?」と不思議顔をすると頼も瞬く。笑満はキッと流夜くんを睨んだ。

「咲桜に乱暴な言葉吹き込まないでください! ただでさえ在義パパのせいで変な方向の知識だけ特化してんですから、先生も同じ側だとは聞いてますけど咲桜に悪影響及ぼすんなら咲桜あげませんよ!」

「………」

流夜くんが笑満に怒られた。

流夜くんは「あー」とうなった。怒られることの自覚があったようだ。

「すまん。改める」

「そうしてください。あたしの王子様に変なこと吹き込まないでくださいね」

「―――松生、その言い方も改めることを勧める」

じゃないと、と続けて、

「………」

流夜くんがちらっと先輩を見たので、私も視線を動かす。

先輩はダメージを受けたみたいな感じだった。みぞおちの辺りを押さえて俯いている。先輩、何かあったのかな?