「?? 流夜くん?」
「………」
違うんだ、咲桜。あいつは間違っているとかいないとかではなくて、存在前提がとち狂っているんだ。本来ならいないはずなんだ。
だからこそ主咲の傍に在れるのだけど。
怒るとか怒らないではなくて、歯止めをかけておかないといけないんだ。
怒って怒鳴って摘まみ上げて軌道修正しないと、あれはまだまだガキ過ぎるんだ。
「…………」
十秒かけて空気を吸い込んだ。
「……頼む」
「うん、わかった」
その一言以外に、バカで考えの直線過ぎるアホな弟を託せる言葉はなかった。
咲桜を、自分たちの側へ来させようとは思わない。
だから、現場ではなく、現実で、弟を見ている人がいたら。…
…それが咲桜なら、何も案ずることなく自分は別の方を見ていられる。
咲桜ならば、託せる。
「お前は……」
そっと、頬を包む。咲桜は目をきょときょとさせる。
こんなに雪のようで、華のような存在、いたら世界が狂ってしまう。
苦笑。……もう狂っているな。咲桜に出逢ってから、色々違ってしまった。
だからこんなに生きていることが楽しくなった。
咲桜の存在一つで。
そして、将来が続く恋人となったことで。
「――咲桜、いただくか」
「あ、うんっ」
空気を変えるように、微笑んでみせた。手が頬を離れるのにつられたように咲桜も肯いた。
咲桜の料理と、ケーキを並べる。
何を思ったのか、咲桜がケーキを一口分フォークにさして、俺の方へ差し出して来た。
「はい! どうぞ!」
突然のことに俺が黙ってしまうと、咲桜の顔がカーッと紅くなった。
「ごめんなさい!」
「何で謝る? 何をやりたいかはわかったから、ちゃんとやろうな?」