「ああ。すごいな、ほんと器用だな、咲桜」
「盛り付けだけは料理で慣れてるから。ナイフ借りるね?」
「持ってくる。危ないから座ってろ」
「床に包丁突き立てる人に任せる方が危ないよ」
「……」
そう言うと、流夜くんは二秒固まった。それからゆっくり口を開いた。
「……わかった。料理、出来るようになる」
「………流夜くんが?」
「咲桜が教えてくれないか?」
「え――と。……流夜くんに教えるの?」
「咲桜が嫌じゃなければ」
「………」
答えないでいると、流夜くんが覗き込むように見て来た。
「……もしかして嫌な方だったか?」
「……いやって言うか……流夜くんがお料理出来るようになったら完璧になっちゃうじゃん。そしたら私がいる意味ないと申しますか……」
「………咲桜。俺は、咲桜が美味いメシ作ってくれるから大事にしてるわけでも、すきになったわけでもないぞ?」
「………え?」
ふと視線があがって、柔らかい流夜くんの瞳とぶつかる。
「咲桜に惚れた。それだけだ。と言うかむしろ、俺も咲桜を労えるようになりたい。お前はいつも限界突破で頑張ってるからな。咲桜にお疲れって、少しくらい、俺もやりたいと思うんだよ」
「………」
ぽんぽんぽん。
「だから、教えてくれないか?」
「……簡単、なのからでよかったら」
「ああ」
「最初は包丁握らせませんよ」
「……ああ」