「荷物多いと思ったら、こんなに準備してくれたのか」
「あ、あはは。ちゃんと言っておけばよかったよねえ」
びっくりさせたかったのも本音だけど、微妙なすれ違いが発生してしまったようだった。
「流夜くんは、お酒とかは? 私が買うのは無理だったけど」
ご時世、お遣いでも未成年にはお酒は売らない。売った方にも罰則があるから。
お祝いの日だから、と見上げると、流夜くんは「ああ」と応えた。
「基本、飲まない。飲めないわけじゃないけど、好まないし面倒だし。在義さんや龍さんも、酒もタバコもナシだろ?」
「あ……そういえば。やっぱり父さんたちの影響ですか」
「ですね。酒は、万が一にでも酔ってるときに何か発生したとき対応出来ないから。タバコは、そのにおいや銘柄で個人の特定をされる可能性があるから。龍さんが探偵稼業だから、特にタバコはきつく言われてた。龍さんの探偵学。俺も好んでるものじゃないし、咲桜に悪影響与えたくないし」
今、本当騒がしいもんねえ、この問題。
でも、私も酒もタバコもやらない在義父さんの許で育っているから、好まないでいてくれるのはありがたい。
免疫ないし、タバコの煙は嫌な咳込みを引き起こすから苦手だし。
「そっか。よかった。私もにおいきつくて苦手だったから」
「酒も?」
「んー、料理酒は使うから全部じゃないけど……酔っ払いはすっごく嫌い。フライパンで殴りたくなる」
「………」
過去に何があったと流夜くんの顔が険しくなる。
流夜くんの不穏な視線に気づいて、「ええとね」と続けた。