「それでね、これからもいっぱい、色んなこと知りたいって思った。私家政以外はほんとダメだから……こう、流夜くんたちがやってるような、学問の世界? を、見てみたいって、思った」

きっとそれは、流夜くんの傍らに自分より年下の相棒の姿を見たことが、強く思うようになったきっかけだ。年齢などいざ関係なく、学問の世界はひらかれている。

流夜はふっと笑った。

「いいと思うぞ。歴史以外にも数学生物物理言語法律心理――咲桜が気に入るものが早く見つかるといいな」

「うん。がんばる。……そう言えば、なんで流夜くん歴史の先生になったの?」

「犯罪史学が一番得意だったから」

「………」

得意の方向性が間違っている気がする……。得意と言うか……特異?

「咲桜も、取りあえずは色んな本読むことかな。合わないと思ったら完読しなくても別の本に切り替えていいんだから」

「そうなの? 中途半端でいいの?」

「真実その本を網羅したいって思うだったら完読しないとだけど、まだ他の分野に意識向きそうだったら、その本は後回しにした方が早い。自分の領分を見つけるのが、な」

「……うん」

「でも咲桜だったら家政を極めるのも一つ手だと思うぞ。料理上手は周知だから。調理師とか管理栄養士とかもある」

「お料理かあ……」

顎に人差し指を当ててうなる。一番得意だからこそ、あんまり考えたことがない進路だ。

「まだ一年生なんだ。色々やってみるといい」

「うん。だよね」

胸の前で拳を作る。うん。

「よし、じゃあ食べますか。色々作ったんだよー」

お誕生日バージョンの料理が保冷ボックスから並べられる。