「? そうか。えらいな」
家事全般に意識を傾けて来ていて勉強があまり得意ではない私が、自分から勉強したこと自体珍しい。
「その……前に流夜くんが言ってた意味がわかりました」
「………」
流夜くんはこれだけでは意味がわからなかったようで、首を傾ける。
「その……昔は、えと……契りがあって、それで結婚って考えだったんだねっ」
声が裏返った。えーと、これ以上はどうぼかした言い方をしたらあああああ。
「まあ、平安時代とかは特にそうだよな」
流夜くんは、さすが歴史科の先生、大まかな意味をわかってくれたらしい。
「だから流夜くん、卒業までないって言ってたんだねっ」
まだ声が裏返っている。流夜くんはぽかんとした。
「咲桜? どういう解釈だ……?」
「これ以上はムリ! 言えない! 噴火する!」
「あ、そう、か」
すごい勢いで否定した。だってこれ以上こういう話をするのは恥ずかし過ぎるって! 自分から振っておいてなんだけど!
「そうだなー。そういうことかなー」
流夜くんが間延びした声でそう答えてくれて、私はほおっと息をついた。大分緊張していたから。
「安心した?」
手を伸ばして来て、私の髪に触れる。
「う……ごめんなさい、幼稚で……」
「まあ、いい」
くすりと笑う流夜くん。