「え? だめ、とは……?」

「せっかく在義さん公認で朝までいられんだから、嫌なわけないだろ。むしろ、明日になって帰せるか心配」

「………」

て、照れてしまうじゃないか。そんなに、一緒にいていいと言ってもらえるなんて。

「咲桜……」

「はい?」

流夜くんの左手が、右側に座る私の右頬を捉えた。何かを言いたげに瞳が細められた。

「……来年も、こんな風にしたいな」

「こんな風?」

「お互いの誕生日が重なる時間、一緒にいたい」

「………うん」

恥ずかしくて瞼が伏せ気味になる。なんか私、流夜くんの前では途端に大人しくなってしまう……。

学校では『日義の飼い主』とか呼ばれているんだけど。

「また、在義さんに了解もらっておく」

「来年も?」

「うん。咲桜はまだ在義さんの庇護下だから」

「じゃあ……卒業したら………その……」

先走り過ぎたことを言ったかもしれない。

流夜くんからすぐに返事がなかったのを不安に思って上目遣いに見上げると、流夜は口を真一文字に結んでいた。ああああやってしまったああああ! これってあれだよ重い女だよ! 誤魔化せ!

と、頭がくだした指令に添おうとしたら、流夜くんの空いていた反対の手も、咲桜の右手を握った。

「そうだな。在義さんの許しが必要なくなっても、この時間は一緒にいたいな。三十一日と、一日の夜」

在義父さんの許しが必要なくなっても。……それは、私の苗字も変わった頃のこと?

「約束、したい、です」

「うん。約束しよう。何があるかはわからないけど、二人の誕生日は、一緒にいよう」

「はい」

すっと、掬い取る形で、私の左手を持ち上げた。