「……素直だな。俺も、こんな中途半端なとこで言う気じゃなかったんだけどな。なんか、早く言いたくなった」
「あああ、笑満に気を遣わせてしまったかもしれないし父さんや夜々さんも絶対なんか企んでる! だって今日流夜くんとこいていいって言ってくれたんだよ⁉ 絶対何かあるでしょ!」
混乱から叫び倒す。
――在義父さんは、「誕生日の日、咲桜は笑満ちゃんのところってことにしておくよ」と言ってくれた。
のだが、その「しておくよ」の対象が夜々さんであって、流夜くんが在義父さんに頼んだ翌日から、以前にも増して、学内で受ける夜々さんの視線が射殺されるかと思うくらい冷えたものになったことは、私は知らなかった。
流夜くんが私の左頬を引っ張った。いひゃい、私は一度意識の全部が頬、流夜くんに向いて挙動不審を収めた。
「俺が頼んだ。在義さんに。咲桜といさせてくださいって」
「………そうなの?」
「ああ。そうしたら、……まあなんとか了解をもらった」
「なんとか?」
在義父さん、また流夜くんいじめたのかな……。若干顔色が悪い。
「それで、咲桜はそれ作ってくれたと?」
気を取り直したように流夜が、咲桜の膝の上のものを指さす。
「あ――うん。笑満に教わって。……私壊滅的にお菓子作り下手なので。……出来の保証は、あまり……出来ない……かも……しれない……けど……」
今更ながら不安になってきた。どうしよう、お砂糖とお塩というベタな間違えをしていたら。流夜くんだったら笑って済ませてくれそうだけど、なんでお誕生日に塩辛いケーキ食わなきゃならんのだ。