「――笑満ちゃんと、お付き合いさせてもらっています。認めていただけますか?」
本当は、もっとずっと先に言うつもりだった言葉。
でも、ずっと先は今だった。
生満子さんと憲篤さんはわずか沈黙した。言葉のない空間が痛い。過去と今では、全然違い過ぎるのか――
「……ぼくたちを、ちゃんと頼れる?」
「……え?」
「あの時ぼくたちは遙音くんに何も出来なかった――けど、その申し訳ではなくて、困ったときとか、辛いときとか、笑満の恋人として、ぼくらを頼る事が出来る?」
「―――」
笑満ちゃんの恋人として、笑満ちゃんの家族を。
「……頼、っても……いいんですか?」
気の抜けたような俺の問いに、生満子さんは苦笑した。
「当り前でしょう。笑満の彼氏なら、あたしたちの家族になるかもしれないのよ? 家族を頼らないでどうするの」
「……かぞ、く……」
唇が、微かに動く。
家族? もう自分にはいないのに――これから、でも……出来るのか? 出来て――いいのか?
唇を噛んだ。もしかしたら、心の中では願っていた? 笑満ちゃんと恋人になることで繋がる可能性――
「………」
でもそれは、笑満ちゃんでなければ願いもしないし、考えもしなかったことかもしれない。
感情も、現実も、笑満ちゃんが全部、くれたもの。
「……笑満ちゃんのこと、絶対絶対、一番に大事にします。……ずっと、絶対」
顔をあげられなかった。俯いたまま唇を噛んだ。この優しい人たちが、幼い自分の傍にいてくれた。
……今も、一人で立っているのは不安定な自分だけど。
「……お願い、します。笑満ちゃんと一緒にいることを、認めてください」
「――うん」
憲篤さんの鷹揚な返事。俺はやっと顔をあげた。憲篤さんは泣きそうな顔だった。
「笑満のこと、よろしくお願いする」
そっと、憲篤さんの手が俺の頭を撫でた。
「よく……頑張ってくれたねえ」