「却下。次言ったらそれ壊すよ」

「……わー、似た者同士―」

ぱちぱち、と頼が手を叩いた。どういう意味か。

旧館の入り口を通過して、流夜くんが占領している上階を目指していた、ところで。

一応一言、頼に言って置かねばと思った。

流夜くん自身、学内では目立たないようにしているから、私はそれに加担したい。

「大体ねえ、いくらりゅ――先生だって騒が

「だからなんで塩まくんだよ! 俺は幽霊か! ちょ、痛い!」

「消えろ呆け」

『………』

生徒より五月蠅い教師たちがいた。

「宮寺?」

先輩が呟く。

そういえば、大学の研究機関にいる宮寺先生は、期間限定の講師が終わったあと、母校である藤城の非常勤講師を引き受けたと聞く。

宮寺先生の専門分野は遺伝子学。

笑満が不安そうに先輩を見上げる。

「ほんとになんか投げつけられてるよ、遙音くん」

「……昔っからあんなだ」

……それは哀しいな。

「ちょっと止めてくるわ。あんま五月蠅いといくら旧館でも目立つし。元々宮寺って目新しいから目立ってるし」

先輩がさっと前に出て、旧館の廊下で騒ぐ教師たちに割って入った。

私は傍らの幼馴染を見遣る。

「頼、宮寺先生は?」

「特にふつー」

「……興味あんだね」

特に普通、なんて日本語はない。普通の中でも特等の位置だと、頼は認めたのだろう。