「だって遙音くんに逢ったら自然と号泣しちゃって」
「そうよね。笑満、お茶の準備してくるから、オトをリビングに通してあげてね」
「うんっ」
笑満ちゃんは嬉しそうに俺の手を引いた。
初めて入る、『今』の松生の家。
憲篤さんは言われた通り顔を洗いに行って、生満子さんはキッチンに向かった。
ソファに連れて来られて、ドキドキする心臓を必死に押さえていた。両手で。
「遙音くん、大丈夫? やっぱりいきなり過ぎた? お父さんが連れて来ちゃうしお母さんは呼びこんじゃうし……」
「あ、いやそうじゃなくて――もないんだけど」
「どっち?」
「その……動悸が激しいのは……笑満ちゃんの、……彼女の家族に、逢ってるから、だから」
「………」
しゅかああっと笑満ちゃんまで真赤になった。
「そ、そうだよね。ごめん、気づかなくて」
「いや。……反対、されるかもしんないけど、言ってもいい? 笑満ちゃんと付き合ってるって」
「反対はされないと思う。……話してくれる?」
心臓あたりを押さえていた手を解く。隣に座る笑満ちゃんの手に重ねる。
「ありがとう」