「……笑満ちゃんはそれでいいの?」
七月三十一日。
午前の補講が終わった後、咲桜はすっ飛んで帰って、頼は相変わらずフラフラしていて、笑満ちゃんは俺と一緒に、咲桜と出逢ったという公園にいた。
「え? 勿論。在義パパは乗ってくれるよ」
笑満ちゃんはキリッとした顔で返した。
うーん、まず驚くのはあの華取在義さんを『在義パパ』などと呼べる肝の据わり具合だ。じゃない、なんで父親と口裏合わせをしているんだ。
はっきりと再会する――前から勿論、学内で笑満ちゃんのことは認識していて、かなり意識して見ていたから感じてはいたけど、……なんっか色々ずれてるんだよなあ……。
……咲桜とか頼の所為なのかなあ……複雑。
「乗ってくる華取さんもどうかと思うけど……」
相手が神宮だから許したのだろうけど。……うーん、まだ唸ってしまう。
「ね、遙音くんのお誕生日も、お祝いさせてね?」
「え? えーと……」
すぐに、楽しみにしてる、とは返せなかった。
誕生日……かあ。俺がはっきりしないでいると、笑満ちゃんは少し俯いた。
「今年、すぐに、じゃなくてもいいの。……何年か先でも、もし、その日に一緒にいてもいいって思ってくれたら、お祝いさせてほしい。ケーキ作るのは得意だから!」
食事系の料理は壊滅的だけどね、と笑満ちゃんは笑った。
「……うん」
曖昧な返事しか、出来なかった。笑満ちゃんはそれに怒らなかった。責めもしなかった。
……俺が生きて来た道を、知っているからだろうか。
これ以上この空気は嫌だなあ。せっかく笑満ちゃんと二人でいる――あ、……んー、と、話しておこう。かな。