……二人は、愛した人が心の真ん中にいる。とうに亡くしていても、その場所は譲らない。
愛した人を間違えない。愛すべき人を、間違えない。自分の感情を、正しく自分のものとしておく。それが意志の強さ。
「諏訪山さんなら上手く降渡くんを操作しそうだよねえ」
「尻に敷かれるのは明白だな。負けてろ」
「負けるな、じゃないんですか⁉」
それって励まし⁉ ツッコむと、龍さんは素知らぬ顔をする。
「おめーみたいなヌケサクは諏訪山の娘ちゃんみてーな思考の強い子に押さえつけられててトントンだ。周りの被害が少なくなるからちょーどいい重石だよ」
「絆を何だと思ってんですか⁉ そもそも俺って人間扱いされてます⁉」
周りの被害って俺何したっけ⁉
「さーてなー」
「相性がいいと、いいねえ」
「反対されるより辛いかもしれないんで俺もう行きます!」
なんだこの仕打ち。育ての親、容赦なさ過ぎだろう。泣いてこの店逃げ出したい。
俺は半分泣きかけて《白》を飛び出した。
少しだけ静かになった店内では、カウンターの中で龍さんがため息をついていた。
「……あんまいじめてやんなよ。お前の八つ当たりは四方八方飛び越えて六十四方以上に向くからめんどくせえ」
「え? 正しい指摘じゃなかった?」
「正しさに重きを置かねえお前が言っても説得力ねえ」
「否定出来ないなあ」
「……明日にゃ流夜、地獄を見るな……」
「それも否定出来ないなあ」