「お前の『ごめんなさい』『もうしません』は全く当てにならんな? 俺が聞くのは何百回目だ? ん?」
「ごふぇんにゃさい~」
頬を摘ままれて半分泣きかけた。本当を言うなら千回単位かもしれない。
「――ま、俺が治すからいいんだけどな」
「ふぇ?」
ぶにぶにされていたのが止まり、主咲くんの黒曜の瞳を見返す。
無表情の中の瞳に、真っ直ぐに私が映っていた。
「さくの傷の治療はどうすればいい?」
「………」
「言わないと治せないぞ?」
「………」
「ん?」
「―――」
だきっ。主咲くんの羽織を摑んで、思いっきり抱き付いた。
今までにしたことのない反応に、主咲くんは刹那止まってしまった。
「……さく?」
「これで! 大丈夫なので!」
「……これで?」
「こんだけくっつけばもう全部回復したから!」
「……新しい言い訳だな」
「主咲くんが年中恥ずかしいことするからでしょう⁉ ちゅーとかしなくても治ったよ!」
「それは単にそういう風に触れたいだけだ」
「! だからそういうこと言わないで! ちょっと手ぇ繋ぐだけでも私の傷治るし主咲くんだって治るんでしょ⁉」
「さくと俺はそういう風に出来てるからな。――だが、俺の回復はまだのようだな」
「―――え?」
「仕事が山積みだ。手伝ってくれ」
「―――――」
主咲くんの表情は相変わらずだ。けど、その黒曜の瞳の光の色、強さを、わかる距離にいる。
この国に一人でやってきたときから、ずっと。