「はー……なんで俺が天科(あましな)の方やらなきゃいけないんですか」

在義さんが一度咲桜を部屋に戻した隙に、悪態をついた。

「天科サンが絡んでくる交渉事なら、蒼(あおい)や衛(まもる)の方が適任でしょう」

「ん? そりゃあ君が全(ぜん)くん寄りでも十三人寄りでもないからかなあ。これってもともと、全くんを通した閃(せん)くんからの依頼だし。君に千歳をやれというほど鬼畜でもないつもりだよ」

「……そうかもしれませんが」

あっちは本当関わりたくない。桜宮学園関連の連中は、クセが強すぎる。

「ああ、そういえば咲桜と笑満ちゃんって小説すきだよねえ。なんだっけ、咲桜が『猫さま』とか呼んでる――」

「……まさか、天霧猫(あまぎり ねこ)ですか?」

咲桜の部屋の本棚に並んでいた背表紙を思い出す。すきな作家だと言っていた。

「ね?」

在義さん、にっこり笑い。俺は苦虫を噛んだ。

「……ありがとうございます」

この人、したたかにお膳立てしてくるから恨み切れない。

でもこれで、一つ咲桜と約束が出来そうだ。