「なー! もう! なんでこの時間に呼ぶかなー! あのバカ兄は!」

《白》を出て、ひたすら駆けていた。

目指すは森の中の庵(いおり)。

主咲くんがいる場所だ。

流夜兄さんと事件関係で話があって、終わったら即庵へ向かうつもりだったのを、いきなり呼び出された。

流夜兄さんの恋人に自分の存在がばれた。……ごめんなさい。

まあまあ? 流夜兄さんの態度が柔らかくなったなーとは思っていたから、大事な人が出来たのかねえ、とは思っていた。

自分のように。

流夜兄さんがアメリカに留学していたのは一年だけ。

私が単身、親元を離れ祖父母がいる日本に来たのは十歳のとき。

現場での兄さんとの再会は決められたことのように訪れたが、最初は驚かれた。「お前ほんとに女だったのか」と。

日本に来てすぐ、私は主咲くんと出逢っていた。

十歳の子供ゆえ恋人とはいかないまでも、一番大事な人である意識はあった。

自分にとっての主咲くんが、やっと兄さんにも出来た。

「……文句言いにくいなー」