「ん? ああ。龍さん、本名は『猫柳龍生』なんだよ。ただ警察入って犯人にナメられたとかで、威厳がないって言って母方の旧姓の『二宮』名乗ってるだけ。戸籍上は『猫柳』なんだ」
猫柳龍生?
「それは知りませんでした」
「在義さんが龍さんの苗字呼ぶこともないしな」
確かに、『龍生』って呼んでるのしか知らないなあ。
「さて――」
流夜くんが仕切りなおすように目を閉じた。開いた瞳はどこか虚ろだった。
「流夜くん?」
呼びかけると、流夜くんは額の辺りで手を組んだ。続く声は沈んでいる。
「……在義さんに呼ばれた。本署行ってくる」
「……ご愁傷さま」
「え? なんでですか?」
空気が重い流夜くんと、それを哀れな瞳で見る降渡さん。どういう意味?
「うん、自己責任てやつだし……。だから今日はもう華取の家行けないけど、ごめんな?」
「え? あ、そうなの? ………」
「また行くから」
「………」
こくり。小さく肯いた。
「ラブラブはよいねー」
浮ついた声の降渡さんを、流夜くんは鋭く睨んだ。
「何言ってんだ。お前も呼び出し対象だぞ」