「俺とりゅうはそれぞれ、身よりがなかったところを龍さんに拾われて預けられたのが、龍さんの実家のある天龍。龍さんの祖父さんの家ね。ふゆは、あいつだけは元々天龍の生まれ育ちなんだ。親兄弟元気にしてる」

そうなんだ。それは初耳。

「村中みんな親戚みたいな集落でさ。ふゆがじいさん家(ち)にいてもふつーだったんだ」

「吹雪と同じ年頃の子供がいなくてな。それで、天龍に来た俺たち遊び相手にするために猫柳のじいさんの家に居座るようになった。それから今までほぼ一緒」

継いだ流夜くんの説明に、私は肯く。

「へー。なんかそういうのいいですね。ご近所さん仲良しって」

「村って元々共同体だからな。特にじいさん、かなり破天荒な人だったけど、隠居する前は探偵業の前身みたいなのしててやたら博識だったから、頼りにされてたし」

「じいさんが知らねーことってなかったんだよなー。すごいのがさ、じいさん本を一冊も持ってねえの」

「本、ですか?」

持っていない、とは?

「そ。一度見たものは全部頭ん中入ってる。医学から法律から何まで。もしかしたらサヴァンなんじゃないかなーって思うよ。俺らもそれ口伝(くでん)で聞いてたから、小学校の分校入るまで本読んだことなかった」

「そうなんですか⁉ それって入学してから大変じゃなかったですか?」

サヴァン――いるんだ、本当に。三度瞬いた。

「本を読む、っつー行為に慣れるまではね。でもそれクリアしたら、書いてあるのは全部知ってることだったから、教師からかって楽しんだなあ」

「降渡だけな」

「………」

問題児の原因は育ての親だったのか。

………あれ?

「あの……さっきおじいさんのこと、『ねこやなぎ』って言いました? 龍生さんのおじいさんなんですよね?」

見返すと、流夜くんが答えた。