「そうしてください。咲桜姉様のことは私から話しますけど。……怒られる気配しかしない……」
「……あいつ怒るとほんと怖―よな」
「……ああ……」
兄弟、また同じように項垂れた。
「ああああの! 私からも謝らせてください! 私が原因だし――」
「咲桜姉様」
私が泡喰って割り込むと、つ、と斎月が身を乗り出して私の唇に一本指を当てた。
「流夜兄さんはそういうこと、負える人でしょ?」
年に合わない妖艶な微笑で言われて、思わずこっくり肯いてしまった。
「そういうとこ、頼れる人には頼っていいんですよ。たぶん咲桜姉様に頼ってもらえないと、流夜兄さん拗ねるでしょ」
「……変なこと吹き込むな」
それこそ拗ねたような言い草に、私は高速で二人を見遣った。そして、
「流夜くん! やばい! 斎月カッコいい!」
「……わかったよ。落ち着きなさい」
流夜くんは、斎月が指を離した私の頭を引き寄せた。
「そういうわけで! 私帰りますね! 何か発生したら連絡よろしくー」
そう言って斎月は、風のように出て行った。
「……あの、ごめんなさい?」
謝って、流夜くんを見る。穏やかな瞳が返ってきた。
「だからいーって。こっちこそ言わないで悪かった」
流夜くんまで謝ると、降渡さんが声をはさんできた。
「あ、言わなかったついでに、絆結婚することになったから」
「………」
「へー。誰と?」
「いや俺以外にいねえだろ。どういう嫌がらせだよ」
目をぱちぱちさせる私と、頬杖をついて大した驚きのない流夜くんに、降渡さんは指先で軽く机を叩いた。
「――おめでとうございます!」
わー! おめでたいことだー!