「えと……なんか……ごめんなさい?」

「いえ、誤解なら解けてよかったです」

「すみません。……ついでに訊きたいんですけど……女の子に追いかけられて怖くなっちゃったんですか? 斎月は」

何故か斎月はキリッとした顔で答える。

「貞操の危機でしたので。あれですよ。りゅーや兄さんが高校とかで女の子とテキトーに付き合ってたのの理由の一つでもあります」

「それ言うなよ。つーかそういう話すると咲桜は

「私だったら羨ましいくらいなのにですよ」

「………」

流夜くん、黙った。やっぱりかお前は、と表情が疲れを見せたけど。

斎月は斎月で、恐ろしいものでも見たような顔で眉根に皺を寄せた。

「めっちゃ怖いですよっ?」

「羨ましいです! 女の子っってきらきらしてて可愛いじゃないですか! 斎月もすっごい可愛いし!」

「待て咲桜! この単細胞に色仕掛けるな! とんでもない奴がついてるから!」

「ぶはっ!」

それぞれ噛みあわない主張をしていると、離れた場所で盛大に吹き出す音が聞こえた。

「………」

首を巡らす。

流夜くんと斎月は誰がいるのかわかっているのか、特に驚いた様子もない。

「お前らすげーなー。色んな意味でー」

「うっさい」

流夜くんが憮然と腕を組む。

離れた位置のカウンター席を立ってきたのは降渡さんだった。

私たちのいるテーブル席の向かいのカウンター席に腰かける。