「いいの? 女子が嫌なんじゃ?」

「咲桜さんだったらいいですよー。代わりに咲桜姉様って呼んでもいいですか? 流夜兄さんのお嫁さんだから」

「咲桜のが格上みてーだな。いいけどよ」

「流夜兄さんより格下がいると思われてか。どうですか?」

「むしろ――私でいいの? 斎月……にとって、流夜くんて大事なんじゃないですか?」

「大事ですけど、そう簡単に死ぬ人じゃないから。むしろいつまでも恋人作らないでいる方が不安です。咲桜姉様と出逢われてよかったな?」

既に姉様呼び確定だった。気恥ずかしい気持ちでいると、流夜くんは「当然」と返した。

「でも私、流夜くんが殺人専門て知らなかったんだけど……」

ぴた、と流夜くんが止まった。斎月は瞬く。

「言ってなかったの?」

「……普通言えねえだろ。咲桜をこっちに巻き込みたくないし」

……やっぱり、そういう風に思っていたんだ。巻き込みたくない、と。

「まあ普通じゃ言えないですよね。私とか流夜兄さんとか、頭おかしい連中ばっかだし」

「そういう意味じゃねえよ。……お前も、華宮(かみや)とか巻き込もうと思わねえだろ」

「あの三人は巻き込もうとしなくても追突してくるからなあ」

「……例えが悪かった。咲桜にはあんまりそういう……話はしたくないと思うんだよ。理由ははっきり言えないんだけど……なんとなく」

「………」

あ、この感じ。既視感。

「なんとなくだけどわかるかも。たぶん在義父さんも、そういう風だと思う」

私に、仕事の話をしたことがない父さん。仕事柄、話せないし話したくないのだろう。

「一つ、訊いてもいい?」

「うん?」

「なんですか?」

「二人は――代わりはいないんですね?」