「ん? そと、って?」

流夜くんがまた変なことを言っていた。訊いてみると、流夜くんは「ああ」と返してきた。

「斎月、俺とは専門が違うんだ。俺が殺人(コロシ)で、こいつは対組織犯罪。組織犯罪はあまり一国では収まりきらないからな。だからさっさとヨーロッパだろうが海の底だろうが行って来いつってんだ」

「私はトレジャーハンターじゃないよ。それに、どんだけ流夜兄さんに貸しあると思ってるの」

「お互いサマだろが。お前の手助けもしてやってるつもりなんだけど?」

「それは恩義感じてますが。だからさっさと話しておけばよかったのに」

「けどお前の恐怖症があんだろ。咲桜のこと怖がられたらいやだから言えなかったんだけど? ……そういや普通に話してるけど大丈夫なのか?」

「あ、そうだね。なんか流夜兄さんの伴侶ってわかったら大丈夫だったかも」

「………怖がる?」

訊き返して、瞬いた。

漫才みたいな応酬だし、組織犯罪とか意味わからない話がゴロゴロしているけど、そういえばさっき、女性恐怖症がどうとか……。

「言ったろ? こいつ、女子に襲われて以来女性恐怖症。友達――一人しかいねえんだけど、それ意外の女とはまともに話すことも出来ない。から、まさか咲桜を怖がられたりしたらさすがに弟でもぶっ飛ばすから。……言わなかったの、そういう理由もあったりする。すまん」

「え……だ、大丈夫、なの? 斎月さん……?」

「あ、はい。咲桜さんはなんか大丈夫です。普通に話せてるでしょ?」

それから、と斎月さんは続けた。

「斎月でいいですよ。呼び捨ててください」