「……斎月」
「……なに」
「………話しておくか」
「………主咲くんにも話したし、そっちのが筋だよな……」
と、二人揃ってため息をついた。
それを聞いて、軽く顔をあげる。
この二人、さっきから反応が似ているな……。
だから兄弟なのかな? 口火を切ったのは流夜くんだった。
「これは――本当に誰にも言いたくないから、斎月の男しか知らねえ話だ」
「流夜さんの幼馴染は知ってるかもしれないけど、自分の口から話したのは、咲桜さんで二人目です」
真剣を通り越して深刻そうな二人の話し方。な、なんだその秘密感は……。聞いていいのかな?
私が動揺から不安を言葉に出来ないでいると、流夜くんが重い口を開いた。
「斎月はアメリカでは男だった。それが……最悪だったんだ……」
今度は二人揃って頭を抱えて机にうなだれた。
だからさっきから兄弟のようにそっくりすぎる。
「何が、あったの……?」
そう訊くしか、選択肢がなかった。
二人の声が重なる。
「「学内の女子生徒に襲われたんだ……」」
「…………え?」
呆然とした返事しか出来なかった。
二人は遠い目になる。
「そんなに日本人が珍しかったのかな……」
「集団になって追いかけてきてな……斎月と学内逃げ回って隠れ場所を転々としながら一日が過ぎるのを待ったんだ……」
「…………」
取りあえず、沈黙。
どういう事態?
当時は男の子と認識されていた斎月さんと、中学生の流夜くん。
この二人がつるんでいれば確かに目立つだろう。
成績優秀だそうだし、色んな意味で。
それが……なんだって?
「襲撃という勢いで襲撃されてなあ……」
「女子相手だから殴るに殴れなかったし……逃げるしか出来なくて……」
………。
本当に襲われたのか。様子からして、意味的には色事意味合いなんだろうけど……。
はあ、二人は同時にため息をついた。