「お前らは少し痛い目見ろ。娘ちゃん、流夜が小娘のこと話さなかったの、俺からも釈明させてくれ。こいつは結構警察のマル秘事項なガキでな。娘ちゃんはあくまで警察外の子だから、言わなかったっつーか言えなかったんだ。親代わりとして謝る。すまなかった」
「……なんとなく言えない方なのかなーとは思っていたんですが、その……色々意味が分からない単語が飛び交っているような……? 気がするのですが……」
「まあそうだろうな。流夜、小娘、説明責任はおめーらにあんぞ」
龍生さんはそれだけ言い置いて、戻って行ってしまった。
「……何がわからない?」
流夜くんがまだ痛むらしい額を押さえてこちらを見遣る。
「えと……いつきさん? が男の子だったとか、同期とか?」
「兄さん、私から」
斎月さんが軽く手を挙げた。紅くなった額の顔で、私の向かいに座った。
「私の両親は日本人ですが、アメリカの生まれ育ちです。日本には十歳のときに来ました。四歳で向こうの大学に入りまして、そのとき留学していた流夜さんとは同じ学部で知り合いました。男だったっていうのは、家の事情でそういう風に育てられたってだけです。心が男子とか、そういうことはないです」
「男いるしな」
「です。ちゃんと彼氏います。あ、流夜兄さんは兄貴扱いしかしてませんので。なんかそういう女子っぽい疑惑はいらん心配なので大丈夫です」
軽い口調で言って、パタパタと手を振る斎月さん。
「………」
……詳しく説明されてもいまいち理解し切れない。
呑み込むために頭を悩ませていると、向かいの斎月さんが流夜くんを見た。
「こういう顔合わせで呼ばれたってことは、咲桜さんは流夜兄さんの将来の相手と見てよろしいのかな?」