「わりーな、娘ちゃん。こいつは大和斎月。ほれ流夜、ちゃんと紹介するために呼んだんだろ」
流夜くんは不満百パーセントの顔で斎月を睨んだ。
「大和斎月。清める意味の、『斎み』に『月』って書く。中三。アメリカの大学の同期。今は同業者。簡単に言えば弟」
………。
「待って! 色々訊きたいことだらけだけど全く簡単に言い表せてないよ⁉ 女の子なんだよね⁉」
「最初は男だったんだ」
「さいしょ? やっぱり――何か手術的なことをされた、とか……?」
声を濁らせる私に、斎月さんはいや、と手を振った。
「そういう意味じゃないです。アメリカでは男として育てられていて、流夜兄さんも最初は私を男だと思っていたってことです」
お、男として……? 流夜くんが、憮然とした表情で続けた。
「しかも女子共から逃げてる最中にカミングアウトされてよ。一瞬こいつにも引いた」
「男っぽい振る舞いしてただけだろ」
「その口調も直せ! 主咲が俺に文句言ってくんだよ!」
「私が口悪い半分は兄さんの所為! 『俺』って言わなくなっただけマシだと思え!」
「うるせーつってんだろ」
ゴチンッ
「「~~~~~~~~」」
龍生さんの撃(げき)を喰らって、また蹲った。
学習しないのかな、この二人……。
総て承知している様子の龍生さんを見上げる。
「龍生さん……?」
「このガキ共いつも兄弟喧嘩上等でよ。斎月の小娘のことは弟扱いで十分だからよ」
龍生さんは何でもない風にへらっと手を振った。
「龍生さんほんと痛い……」
斎月さんが涙目で龍生さんを見上げる。
か、可愛い……。……流夜くんには女好きとか散々言われているけど、実際ほのかにときめく瞬間だった。
龍生さんは、はっと吐き捨てる。