流夜くんは在義父さんに呼ばれて、何やら話し込んでいる。
「ちと―――あの子供は、「―――なな―さん――――せあさぎ―――「――かのうの―――――
あとはお椀に盛るだけだからと流夜くんを在義父さんの方へ行かせた私は、キッチンで二人の話を断片的に聞いていた。
けど、聞いていいものかわからない。
わかるのは、私を部屋に戻して話していないことから、絶対に外聞がゆるされない話ではないのだろうということだけだ。
けれど、流夜くんや在義父さんの『仕事』に関することは、聞かされない限り訊かないようにしている。
生まれてから――生まれる前から――ずっと在義父さんの娘だから、簡単に首を突っ込んでいい世界ではないことは百も承知だ。
そういえば、と思い出す名前がある。
天龍。
流夜くんの育ったところ。在義父さんの生まれた家があった場所。
一度くらいは見てみたい気がするけど、父さんを追い出した場所に行きたくないという思いもある。
……今はどちらにも傾けない。
けれど、もしそこへ誘(いざな)ってくれたのが流夜くんなら、たぶん私は一緒に行くだろう。
手を差し出してくれたら、迷いなく重ねて。
「………!」
急に顔が熱くなった。なんか恥ずかしいこと考えた気がする! ぶんぶん頭を振って必死に冷やそうとしてみる。
意味なかった。
「咲桜? どうした」
リビングにいる流夜くんに気づかれて、はっと固まった。
「な、なんでもないと思う!」
叫んで、さっさかご飯を並べる。
いつの間にか三人でいることが当たり前になってきたような感覚のあるうちの食卓。