「お前いい加減俺と結婚しろ!」


「………」


「あ、ごめん咲桜、遅くなって」
 

出入り口で固まった私に、カウンターの入り口に吹雪さんと並んでいた流夜くんが気付いて寄ってきた。


促されて中に入り、ドアを閉める。


「いえ、それはいいんだけど……どうしたの? って言うか今の――」


「降渡の十三回目のプロポーズ」


「十五回目だよ。僕が知る限り」


「また回数増やしたなー」


「………」
 

お店の中にお客さんの姿はなく――もともと龍生さんの経営する喫茶店・《白(シロ)》は、探偵やその筋の人たちが使うお店だから一般客は珍ほぼいないらしいのだけど――怒鳴り合う降渡さんと、切り揃えたショートカットの髪が勇ましい小柄な女性だけだった。


「あの……これはどういう状態ですか……?」