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岬に扮装(ふんそう)した一日。
四教科のテストに関してはもちろん、特段問題は生じなかった。全く支障は無かった。全く、だ。


「……お前、もう岬のフリすんのやめとけよ」

「なんだ。ついてきたのか」


帰り道。後ろを振り返ると、庵が苦虫をつぶしたような顔でこちらを見据えていた。「お前にはもて余す役割だった」「素人にも見抜かれる所業だ」などとぬかしていたが、聞く耳を持たなかった。


「明日には元に戻れるんだろうな?」


岬に扮する日々が続くことを、庵はよほど案じているらしい。厘は寄せたくなった眉を堪え、「まぁ、おそらく」と息を吐いた。



「煮え切らねぇな……。とりあえず俺はもうごめんだ。お前に術をかけるのはな」


クシャッと金髪を乱しながら放つ庵を横目に、思い返した。周りから敬遠されている岬の立ち位置。そして、妙に居心地の悪い教室の様子がこびりついたまま離れない。